inugamisahee's profile犬神家のピクニックと日記PhotosBlogListsMore Tools Help

nakayama

Mobile Space Address

犬神家のピクニックと日記

本とDVDと映画の感想を綴ったもの
November 01

「タフ」26巻

猿渡哲也 作 集英社
 
 ついにハイパーバトルは、きいちの優勝で終わった。しかし、きいちの本当の父親は誰かという謎は残されたままだ。またきいちは、優勝者として宮沢3兄弟の長男である尊鷹と戦う予定であったが、これも持ち越しとなった。
 ハイパーバトルは、主催者の逮捕?で突然の幕切れとなり新たな、ストーリー展開となる。
 
         「タフ」26巻 
September 12

「昭和史最大のスパイM」

小林峻一・鈴木隆一 著 WAC
 
 スパイMとは戦前の日本共産党幹部で特高側のスパイとなり、共産党を壊滅においやった人物である。いままでうっすらと知っていたが、具体的にどんな人物か知りたくて読んだ。Mは単なる情報を流したスパイにとどまらない。一方では、共産党の活動をシンパ層まで積極的に盛り上げて、シンパ層まで壊滅させたり、ギャング事件等で共産党の評判を大いに下げた上で、民衆からの支持も失わせた。スパイ以上のスパイだったわけである。
 でも他方では、特高べったりではなく、特高側を裏切ったりもしている。スパイとして、共産党と特高を間にして生き抜くことはたいへん至難の業だったろう。
 ただ、スパイとして共産党を離れた以降の生活は、たいしたことない。共産党の影におびえながら生活していたことだろう。昭和史の裏面史の一つだ。
 
         「昭和史最大のスパイM」
September 06

「昭和の名将と愚将」

半藤一利・保阪正康 著 文春新書
 
 昭和史の筆者である半藤一利と保阪正康が戦前の軍人たちを名将と愚将に分けて、対談した内容となっている。ただ、すんなりこれを読むには軍人たちに関する事前の知識が必要だろう。少々雑駁な内容となっているように思えた。もちろん戦争では負けたのに、なぜか取り上げられている軍人の中では、名将の方が多いというのが不思議な気がする。
 愚将であげられているのは、次のとおり。服部卓四郎、辻正信、牟田口廉也、瀬島龍三、石川信吾、岡敬純、大西瀧治郎、富永恭次、菅原道大。愚将は、もっと多いと思う。愚将の方が戦後まで生き残っている人が多いというのも、また気分を重くした。
 
         「昭和の名将と愚将」  
August 30

「沖縄ルール」

都会生活研究プロジェクト編 中経出版
 
 一般的にはあまり知られていないその地域の慣習等が面白く紹介されている。中経出版は同様のシリーズを他に東京、大阪、名古屋といったものを出版している。でも、沖縄には1回しか行ったことがない自称沖縄通?の私にとっては、いずれも既知のもので目新しいものがなかった。ちょっと話の種に読む分は楽しいが、もっと深い分析等がないと単にひまつぶし的な読み物に終わるだろう。
 
       「沖縄ルール」
August 23

「プリズン・トリック」

遠藤武文 著 講談社
 
 本年度江戸川乱歩賞の受賞作。通常、新人の受賞作品は、よほど評判にならない限り読まない。宣伝文は派手だが、あとに残らない作品も多い。今作品はその宣伝文句に引かれて購入した。
 刑務所での殺人事件という、不可能性に挑戦している。刑務所で殺人を犯して、刑務所から逃げることなんてできるのか、そんなルパン三世並みのトリックに挑戦している。
 前半の不可能性がどんどん広がっていく様は非常によい。信じられない展開が続く。それだけに後半部分は、ちょっとあわてすぎた感もある。登場人物が多くなりすぎて、物語をわかりにくくしている。でも新人にしてはなかなかよかったと思う。問題はこれが2、3作品と続けられるかどうかだ。1作品だけ、賞を受賞して注目を浴びても次回作品につながらなければ作家として、続けていくのは、難しいだろう。次回以降の作品が評判になったらまた読もう。
 
August 16

「ゴルゴ13」総集編№156

さいとうたかおプロ作品 小学館
 
 「再発・ギランバレー症候群」「PKO」「一射一生」の3作品が収められている。最初の作品では、ゴルゴ13の持病であるギランバレー症候群の症状が出てしまうという物語。日本では特定疾患、いわゆる難病指定されているので、医療費が無料になる。ただゴルゴ13の場合、症状が出るのが数年に一度という割なので、症状としては軽度なのかもしれない。
 一番面白かったのは「一射一生」 ゴルゴ13が依頼に必要な技術を日本古来の弓道に求めるという物語。弓道について書かれていることが興味深かった。
 
 
August 15

「よつばと!」5巻

あずまきよひこ 作 電撃コミックス
 
 「よつばと!」の5巻目。あいかわらず、よつばは元気です。夏休みを隣の家の風香やえなといっしょを満喫しています。ただ、よつばは、まだ学校には行っていないので、1年中が夏休みなんですが。
 最後の物語で、よつばは、みんなで海水浴に行きます。その日は8月30日ということになっています。そう、夏休みもあと31日の1日だけです。海水浴では、遊びすぎたよつばちゃんが、疲れて寝てしまいます。つかれて寝てしまうほど、遊びまくったわけです。以前、小さな子供が友だちと遊ぶことは、社会性や、コミュニケーション能力などを身に付ける上でもっとも重要なことだという指摘をどこかで読んだことがあります。小さな子供にとっては、遊ぶことが学ぶこと、遊びが仕事だ、といっていいかもしれません。でも今は、外で友だちと遊ぶ機会もめっきり減っているような気がします。子供を対象とした犯罪も多いから、子供も気軽に外へ出かけるころができなくなりました。残念です。
 よつばは、思いっきり遊んでいます。この本を読んでいると、よつばは、ちょっと変な子供だなと思ってしまうことがありますが、それは、大人の目線で子供を判断しているからだと思うようになりました。
 よつばちゃん! いっぱい遊そべ。
 
       「よつばと!」5巻
August 11

「同期」

今野敏 著 講談社
 
 先日読んだ「武士猿」の作者である今野敏が本来の活躍の場であるミステリー作品で発表したもの。警察小説になる。警視庁勤務の刑事である主人公が、自分の同期で公安部門に勤務しているものが突然理由もわからずに懲戒免職となるところからはじまる。勤務していた部署が「公安」部門なので、背後にいろいろあるのではないかと自分で捜査をはじめる。
 その同期の懲戒免職と主人公がたずさわることになった殺人事件とが実は、関係あることが徐々にわかってくる。最初から、ぐいぐい引き込まれる物語で、あっという間に読んだ。刑事の地道の捜査ぶりも描かれていて、たいへん興味深くなった。ラストはちょっと盛り上がりに欠けるラストだが、それまでのストーリー展開は読ませるなと思った。以前に読んだ、「武士猿」とは異なり、筆も滑らかなように感じた。
 公安と警視庁という背景は、大沢在昌の新宿鮫シリーズよく似たイメージだなと思いながら読んだ。
 
        「同期」 
 
August 09

「田村はまだか」

朝倉かすみ 光文社
 
 小学校の同窓会が行われて3次会のスナックで残った5人の男女が飲んでいる。彼らは、小学校以来はじめて会うことになる田村が来るのを待っている。彼は仕事のため、ずっと故郷に帰れなかったのだ。その田村が遅れに遅れてようやく3次会に来ることになった。
 男女5人は、田村が来るまでたわいのない会話をしている。これは、田村を待っている間に、その5人、1人1人についての最近の物語を語るのがこの本の中心だ。短編の連作集といった感もある。
 5人は40歳。若さは過去のものになりつつあり、現在の自分になりかしらの不満足を持っている。いまひとつ物足りない。1人1人の物語をもっと語るべきではなかったろうか。中途半端にそれぞれの物語が終わっている。最後に田村がようやくやってくることにはなるのだが、結末はちょっと期待はずれ。この短編は藤沢周平の影響だろうか? でも藤沢の感動には遠く及ばなかった。
 
       「田村はまだか」
August 04

「満州国演義5 灰塵の暦」

船戸与一 著 新潮社
 
 敷島4兄弟の満州国にかかわる物語も5巻目に入る。具体的にはこの巻は昭和11年からはじまり、西安事件から、盧溝橋事件、南京事件へと至る時代を背景としている。4兄弟のうち長男は外交官なのだが、いかにこの時期の日本の外交官が無力かということが長男を見ていればわかる。他の兄弟たちは、満州を中心とした中国中をかけめぐっているが、この長男だけはほとんど傍観者的に描かれている。外交の現場が描かれることはほとんどない。長男の記述は大使館等の職場か自宅のどちらかを舞台としている。外交はほとんど軍部の意向によって進められている。
 満州に傀儡政権を作った日本であるが、これも暴走をはじめる。満州の先、蒙古地方にさらに日本の傀儡政権を樹立しようとする謀略が進められる。これは軍部の武藤章(東京裁判で絞首刑となったA級戦犯)を中心として考えられた構想でドイツと手を組みソ連を包囲しようという壮大なものである。日本が蒙古から中央アジアに進み、一方ドイツがソ連に攻め入りドイツも黒海地方から中央アジアに勢力を伸ばせば、日本とドイツの勢力圏がつながりモスクワを中心としたソ連を包囲できるというものだ。まったく、その構想力には驚く。
 もはや軍事力は政治の手段ではなく、それ自体が暴走して自己目的化してしまっている。これを止めるには、やはり原爆のような大きな一撃しかなかったのかと考えることが悲しい。そんな机上の空論が堂々と「常識」として現実化されようとしていたという事実に驚く。
 しかし、当然のことであるが結局それは不可能であった。
 そういった蒙古進出の思惑の過程で、北京近くの通州で多くの日本人が惨殺されるという通州事件が起こる。この事件が日本人に与えた憤激はすさまじく、これは、第2次上海事件から南京事件へと至る日本軍の残虐行為につながっていく。この巻の最終部に南京事件が描かれるが、特にこの部分が右翼から問題視されたということはなかったようだ。まあ、漫画と異なりこの5巻をずっと読んでいる人はそう多くないだろうから。
 5巻目では、次男に大きな変化が出た。いままで流浪の人だったが、相棒にしてきた犬が死んだので、大陸浪人をやめて、モーゼル拳銃も捨てて、背広を着ることとなった。だが、まだ何をやるのかはわからない。
 この5巻は今年の1月に発売された。とうとう発売分はすべて読んでしまった。1巻は満州事件の前、すなわち昭和6年(1931年)からはじまった。5巻を終えて、昭和12年(1937年)まできた。敗戦までまだ長い。あとは、次巻が発売されるのを待とう。
 
        「満州国演義5 灰塵の暦」 
August 02

「007 慰めの報酬」

マーク・フォスター監督作品
 
 ダニエル・クレイグの007シリーズ第2弾。今までは、1作品完結だったが、1作目の続編となっている。1作目に続き非常にスタイリッシュな007となっている。007につきものの秘密兵器や上司の秘書とのたわいもない会話などおなじみのシーンもない。
 携帯電話の使い方がかっこいい。すごい性能を持つ携帯だが、そのコンパクトさも魅力だ。手のひらに収まってしまうぐらい小さい。アクションシーンもよい。今まで、アクションシーンを見ていて、見るほうが「痛い」と感じる映画はそうなかったが、この映画のアクションシーンは、ゴツゴツした「痛さ」を感じる。
 映画の中では、ふたつのイベントが描かれている。歌劇の「トスカ」やイタリアのシエナでのパーリオ(競馬)と並行して、ボンドが敵をおっかけたりする。ストーリーの邪魔をせず、むしろ効果的に盛り上げるようにうまく使われている。
 珍しいことにメインのボンドガールとのベッドシーンがない。
 またMの存在がボンドとの関係でより重要なものになりつつある。Mのプライベートも徐々に姿を現れている。
 1作目と同様に、舞台は、ヨーロッパとアフリカ・中南米を行ったり来たりする展開となっているが、そろそろ日本がまた舞台になってくれないかなと思う。日本が舞台になったのは、ショーン・コネリーの「007は二度死ぬ」以来ない。ダニエル・クレイグのボンドはまた新たに007の神話を作ったようだ。
 
       「007 慰めの報酬」     
August 01

「キャノンボール2」

ハル・ニーダム監督作品(1984年)
 
 映画「キャノンボール」の続編。アメリカのワーナーと香港のゴールデンハーベスト社の合作となっている。物語は、市販車による北アメリカ大陸横断レースのどたばたを描いている。このレースに個性豊かなチームとそのチームにからむ多様な思惑もからんで、はちゃめちゃなレースが繰り広げられる。このレースは公的なものではないので、当然普通の交通規制にかかることになる。この警察の取締からいかに逃れるかが、各チームの腕のみせどころともなっている。てっとり早く言えば、アニメ「チキチキマシン猛レース」の実写版といったほうが近いだろう。
 単に楽しんで時間を過ごすことができる安価なDVD作品を買おうかなと思っていたので、このDVDを買った。本当は「キャノンボール」の1作目を買いたかった。この作品には、007役で有名なロジャー・ムーアがロジャー・ムーア役で出演しているから、それを見てみたいと思ったからだ。しかし、なぜか1作目は、DVDの再販がまったくされていないので、以前に販売されたDVDを買おうとすれば1万円以上かかる。しかたがなく、頻繁に再販されている「キャノンボール2」を購入した。
 出演はバート・レイノルズ、ディーン・マーチン、サミー・デイビスJrからジャッキー・チェンまで多士済々。何も考えず単純に楽しめる作品となっている。エンドタイトには、香港映画お決まりのNG集が流れる。なかにはこっちの方が本編よりも面白いという人もいたぐらいでたしかに笑える。
 時間つぶしにはもってこいのDVDだ。それにしても1作目の「キャノンボール」でのロジャー・ムーアを見てみたい。
 
         「キャノンボール2」
July 29

「タフ」25巻

猿渡哲也 作 集英社
 
 鬼龍が死ぬはずがないと思っていたら、やっぱり生きていた。この「タフ」はやっぱり悪役の鬼龍がいないと面白さが半減するので、必ず必要なキャラクターだ。ただ、この漫画、ずい分描いているので、試合がおおざっぱになってきたように思える。以前はもっと実際の格闘技に忠実に試合を進めていたと思うが、この25巻では、必殺技の応酬という大振りな展開となっている。以前のように、もっと「格闘技」してほしいと思っている。
 
        「タフ」25巻
July 28

「武士猿」

今野敏 著 集英社
 
 作者は、「隠蔽捜査」「果断隠蔽捜査2」などのミステリーを発表している作家。この人、自分の空手道場を持っているぐらいの空手家でもあるそうだ。だからであろうか、明治期の空手や柔道に関する小説をほかにも発表している。
 この作品のタイトルは「ぶしざる」と読むのではなく、「ぶさーざるー」と読む。実在した沖縄出身の空手家(作品中では、空手ではなく沖縄流に「手」と呼ぶ)である本部朝基の生涯を描いている。明治3年に生まれて昭和19年に亡くなっている。
 正直言って、つまらなかった。簡単に描かれていると思った。明治から昭和の終戦直前まで生きたこの沖縄人を描くのであれば、もっと大部の作品にして、空手だけではなく、沖縄が生きてきた歴史にも大いに触れて、もっと大きな作品にできたと思うが、この作家にはその力量がなかったのか。この作品を読んでもこの空手家の「強さ」がいまひとつ実感できなかった。本土に渡っても、この人は、明治・大正・昭和を激動の中を生きてきたはずであるが、あっさり描きすぎたように思う。
 とっつきにくいのが、「武士」というのを強調するせいか? 本部朝基は、沖縄でも有数の名家に生まれている。それが明治維新~琉球処分により武士でなくなった。沖縄の「武士」の誇りを失わない空手家という視点で描かれているが、その他大勢の上級「武士」ではない沖縄の人々はどうなるのだろうか?その人たちの誇りは? 
 実際の本部朝基の生涯はもっと語るべきものがあると思うのだが、小説はつまらなかった。
 
       「武士猿」  
July 27

「宇宙兄弟」第4巻

小山宙哉 作 講談社
 
 第3次選考の真っ最中。密閉空間に5人づつにグループ分けされ、閉じ込められた部屋で共同生活をしている。その中で、思いもよらぬトラブルが起こる。実はそのトラブルは、わざと起こされたもので、それにグループのメンバーがどう対処するかが見られている。
 よく考えたら、この選考に起こされたトラブルぐらい自分たちで解決できないようではとても宇宙になんか行けないことに気づく。宇宙船の中は、もっと狭いし、外部と完全に遮断されている。何事があっても自分たちで解決しないといけないし、メンバーの交替などできない。宇宙飛行士に求められるのは、不意のトラブルに適切に対処し、なおかつ研究等の本来の任務に最大限の成果をあげることが求められている。今回の選考では、それが試されている。
 選考が進むとともに、主人公以外の参加者たちの個人的履歴や個性も明らかにされていく。読み進むと、みんなに宇宙飛行士になってもらいたいとほんのちょっと感情移入する気持ちが生じた。
 いったいこの漫画、選考が終了し、宇宙飛行士に誰がなるか決定したら、そこで、終了になるのだろうか? エンディングが気になり始めた。
 
         「宇宙兄弟」第4巻
July 26

「傍聞き」

長岡弘樹 著 双葉社
 
 4つの作品が並ぶ短編集である。第61回日本推理作家協会賞の短編部門で賞をとっている。人情味があって、ちょっとした謎解きと最後のびっくりもあって、いずれも小作品ながら作品の中に引き込まれる。
 この本の帯にも書かれているが、作品のタイトルそのものがそれそれの作品の真相に至るキーワードになっている。なかなかにくいことをする作者だと思った。
 ちょっと人情味ある作風から、時代小説の藤沢周平を思い出した。藤沢も短編の名手だったが、たぶんこの作家も藤沢の影響を受けていることと思う。短編というのは、なかなか大ヒットにはつがらないことが多い。でもこうした小品を書きつづけることには敬意を表したい。
 でもこの勢いは、次回作につながるだろうか。今回発表された作品は4つ。短編集としても作品数は少ない。この作家にまだまだ多くの「引き出し」があることを期待しよう。
 
       「傍聞き」
July 25

「人間の証明」

森村誠一 著 角川文庫
 
 ほぼ30年ぶりぐらいに読んだ。前回読んだのは、角川映画が「人間の証明」を映画化したときだ。当時は、ものすごいパブリッシュメントだった。今回知ったことだが、この作品は、はじめから映像化を目的として書かれたものであるということを知った。当時の森村誠一の勢いをあらわしていると言えよう。
 その作品は、その後何回も映画やテレビで映像化されていることから、やはり作品そのものに魅力があったと言えるだろう。個人的には、TBSでドラマ化された作品が一番印象に残っているが、今のところDVD化されていない。
 以前、村上龍が、日本は高度経済成長を境にして大きく変わったことを指摘していたことをこの作品を読み返してみて思い出した。それを境に日本は、経済、社会、文化あらゆる面で変わった。大きなことは、貧しさから豊かさに変わったことだろうか。実は、そういった変化がこの「人間の証明」の核心部分となっている。さまざまに変わったことはあっても、最後に「人間」であることは、変わらないものではないか? このことを証明するために「人間の証明」は書かれた。
 内容では、メインの犯人探しのストーリーのほか、「刑事の昔話」「ニューヨークのストーリー」「息子のストーリー」「いなくなった妻を探すストーリー」と複合的に物語が語られることが、この作品を奥行きの深い作品にしている。ミステリー=犯人探しとして読むと、犯人はすぐ検討がつくのであっけない。しかし、事件の背景にある家族・人の人生といったものが、表面の虚飾をはぎとられ、深い底にある真相が明らかにされていく様は、見事だ。
 最後の犯人の追及の場面が、この作品の白眉となる。まったく証拠はない。刑事がかけたのは、容疑者が「人間」あるいは「母親」であることだけ。たぶん今書かれるミステリーであれば、容疑者は平然として、容疑を否認して、他人から見れば、「人間でない人間」として描かれているだろう。まだこの作品は、「人間であること」に希望が見出せた時代の産物かもしれない。
 
       「人間の証明」    
July 21

「龍神の雨」

道尾秀介 著 新潮社
 
 1作ごとにがらっと趣を変えたミステリーを発表する道尾秀介。昨年は、「ラットマン」と「カラスの親指」で快調なヒットを飛ばした。そして今作の「龍神の雨」。2組の兄弟と兄妹の物語。最初、別々だったストーリーの糸が徐々に交わりながら複雑に交錯していく。読み進めていくうちに、だんだんと著者の巧妙なミスリードに引っかかって、サスペンスの罠に落ちて行く。
 ただ、2組の兄弟・兄妹の救いようのない展開に、憂鬱になり、著者に仕掛けた見事などんでん返しにも、さほど驚かなくなっている。主人公たちが小学生・中学生と年が幼い分、彼らの浅はかで感情的な行動がより自分たちを破滅へと導いている様を読むのは、気持ちのいいものいではない。この作品では彼らの若さは、清新さではなく、未熟さを象徴している。
 
         「龍神の雨」
July 20

「さよなら、愛しい人」

レイモンド・チャンドラー著 村上春樹訳 早川書房
 
 村上春樹のフィリップ・マーロウ翻訳物の第2弾。この作品は、マーロウの長編としても第2作目にあたる。だからだとうか、マーロウは、たいへんなタフガイとして扱われている。殴られ、眠っている間に麻薬を打たれて監禁されても、まだあきらめない。「タフ」というのは、アメリカ社会において、一種のステイタスの基準なので、当然だろう。
 私は、マーロウがお酒を飲むシーンがなぜか好きだ。後半にマーロウが、007みたいに、博打船に乗り込むために奮闘している場面があるがほとんど読みとばしてしまった。私はこういった、活劇シーンよりも、チンピラや警官、街の人々とのたわいもないやりとりとか、酒のシーンとかに特に「マーロウ」を感じる。
 ちょうど清水俊二訳の「さらば愛しき人よ」も持っているので、近々読み比べてみようと思う。
 
           「さよなら、愛しい人」
July 19

「殺手」2巻

木村 直巳 作 小学館
 
 満州国に生を得た子供が、終戦後の日本で暗殺者となる話。1巻に続いて、2巻ではソ連が満州に攻め込み、満州国が崩壊する。主人公は、仲間とともに日本への脱出をはかる。脱出行から終戦後の日本で生きていく主人公の様が描かれている。終戦後の日本では、日本人はない台湾人や朝鮮人などがたくましく生きていた様子がうかがえる。
 2巻目の最後では、浮浪児たちの親分として奮闘していた主人公が挫折し、暗殺者となるところまでで終わっている。ここで第1部完とあるので、いよいよ暗殺者としてのストーリーは第2部にゆだねられるようだ。敗戦後の混乱がまだ少なくなかった占領下の日本では、いろいろな事件が起こっている。そんな実際に起こった事件に主人公がどんなにからんでいくか楽しみだ。
 
      「殺手」2巻
 
There are no music lists on this space.
This person's network is empty (or maybe they're keeping it private).